< 大 橋-高城の「これまでのまとめと展望」的な対談>
大橋先生と、とりまとめの高城がこれまでの現状と今後について話ました。
大橋先生の言葉には「ミュージカル牧場」の人に限らず参考になるものがたくさんあります。是非ご一読されることをお薦めします。(実際にはこの数倍の他愛ない話があったのですが…)
高城(以下→):ミュージカル牧場もずいぶんレベルが上がってきて、「ひと安心」なのと、「さあこれからだぞ!」というのが両方ですね。

大橋(以下→):そう、みんなよくやってくれてますね。去年の夏くらいにくらべると、ずいぶんみんなが変わってきましたよ。次の段階に入ったと思います。あと振り付けを覚えるのが早くなってきて助かります。

:逆にこれから新しく入ってくる人は大変なのかな?

:それはそれで、みんなのバックアップもしっかりしてきているから、振りの移しもスムーズにいくんじゃあないかと思います。

:ダンスの次の課題としてはどういうところですか?

:やはり、一つ一つのニュアンスを大事にしていってほしいですね。
「細かい動き」「優しい」「面白い」「大きな」などなどといったいろんな振りがあるので、それぞれのニュアンスを表現していってくれるといいなと思います。

:この先はこんな風にしていきたい、というようなイメージはありますか?

:よく悩むのは、「宝塚とか四季の振りをそのままやる」のは達成感にはなるかもしれないけど、それがベストな結果にはならないのかな…ということですね。
だから、やはり「ミュージカル牧場」なりの方向を打ち出していったほうがいいと思います。

:そうですね、コピーはコピーで勉強になるんだけど、それをそのままお客さんに見せてもしょうがないですね。

:そう、オリジナリティのあるいい方向を見いだしていきたいですよね。「ミュージカル牧場」は「理科の実験室」みたいなところがあって、安心して試行錯誤ができるのがいいです。

:今のミュージカルの現状って、まだまだ試行錯誤していかないといけない段階だと思います。とくに日本人がやる、という前提でしっかりした在り方は確立してないから、存分に「変わったこと」をやっていかないとと思ってます。

:私の理想としては「派手なところもありつつ、いろんなものを削ぎおとして大事なものだけにしていった」ような、…あとは「上品でナチュラル感」みたいなものが出せるといいなと思いますね。うまく言えないですけど…
あと「健康的」っていうのも大事にしたいです。
…そう、それから団体としては「みんなが主役で、みんなが脇役」みたいな、そんな集団になれるといいなと…

:そう、「いい平等」と「悪い平等」があって、「表現としてのいい平等」ってあり得るかもしれないですね、できる人もそうでもない人も、全体の魅力の一部には確実になっている、というような。
そうすることで、「ミュージカルを志す人の入口」としてもうまく機能してくでしょうしね。

:そう、現実的な問題としてミュージカルを低いハードルでスタートできるところって意外とないんです。あってもすごく費用がかかったりとかして。
ミュージカルを志したときに、何を勉強していけばいいかわかんないっていうケースはすごく多いです。最近だとヒップホップをやってる人が多いですけど、バレエとジャズダンスをやる必要は実際のところかなり高いです。
だから、普段の基礎レッスンでなるべくそういうのに馴染んでもらおうと思ってるんですけどね。

:けっこうみんな苦戦してますね。

:バレエをやったことがあると何とも思わない動作も、初めての人はワケわからないでしょうね、実際にやってもらうことが一番です。

:バレエにもジャズダンスにも学ぶべきところがたくさんあって、でも部外者からすると「バレエのこういうところはちょっとな」とか「ジャズダンスのこういうテイストはどうなんだろう?」と思うようなところもあって、そのあたりをうまく取捨選択できるといいんですけどね。

「ここまでできたらまず一人前」みたいな水準としてはどのあたりですか?

:まずは「歌って踊って」を自然にできるようにということですかね、それにはやっぱり、リズムを常に感じて、表現して動いてほしいですね。
そして「動きを大きく」…体からエネルギーが発散している感じを出してほしいです。「器用に畳一枚の上でまとまってる感じ」には、ならないようになってほしいですね。
…と言いつつも、最近は自分で考えた振りをつけるだけで筋肉痛になったりしてショックを受けたりしてるんですが…

:こんな感じとかいいですよね。
(Macでトニー賞のパフォーマンス「ジャージー・ボーイズ」を見ながら、わりと簡単そうな歌振りの例として)

:これは簡単そうで難しいですよ。一人一人にテクニックがないとダメです。

:そうなんだ…「一人前の水準」ってすごく設定が難しいですね。

大橋:そう、教えていく場所でも、カルチャーセンターからセミプロの人達、バリバリのプロの人達、それと宝塚の受験スクールみたいなところ…といろんな場所があって、そこにまたいろんな人がいますから。
どんどん伸びる人もいれば、ちょっと足踏みする人もいるし、選別していくわけじゃないんだけど「今が伸びどき」みたいなときの人には、そこでグンと伸びていってほしいですからね。

:生徒さんのメンタリティみたいなところは変わってきてますか?

:昔はとにかく厳しかったですけど、今は、ちょっと問題を指摘しただけで、ヨロっとなっちゃたりすることがありますね。私のときは怒られたほうが「見てもらっている」という安心感がありましたけど。

:自信が崩れやすいのかな?

:自信を付けるのには、納得いくまで練習する以外にはありえないですね。

高城:メンバーさんの傾向を見ているとスポーツの経験のある人は上達が早いですね。でも最近、思うんですけどスポーツって「勝ち負け」だけど、ダンスはそうじゃないですよね。コンテストとかもあるかもしんないけど、まあ、お客さんとか自分が喜んでなんぼ、というか。

:体の柔軟性とか、キレみたいなものは共通してると思いますが、「勝負事」とは違っているところも多いですね。

:スポーツの大きな要素に「戦闘性」があると思うんですが、そういうものをダンスの中で昇華していくっていうのはありえるのかな?ちょっとわからないです。
スポーツでは、少なくとも、自分が身体をコントロールできてなくても相手のミスとかで「たまたま勝っちゃう」こともあって、それはそでオッケーだと思うんですが、表現では「コントロールできてない」ってお客さんが感じちゃったらそれはもう、スーっと潮が引くように客席が引いていっちゃうんですよね。まあ、それはダンスに限らず、歌でも芝居でもそうですけど、そう、そういえば「ミュージカル」だからお芝居もやるわけですが、ダンス的な視点から見た「お芝居のありかた」っていうのは何かありますか?

:芝居も、踊りも、歌も「心のキャッチボール」というかコミュニケーションだから自分のことも、相手のことも「人間そのもの」を捉えていかないと難しいですね。
「伝えていく」ということがいちばん大事だと思います。
よく、目立ちたがりがこうゆうことをやっていると思われるんですけど、むしろ日常の生活ではそうでもなかったりするから、できている部分もあるんじゃあないかと思います


:大橋先生の現役…というか舞台に出てる頃のエピソードというか、ざっと振り返ってみてどうですか?

:宝塚ではずいぶんいろんな振付家さんの振付が受けられたから、今、すごく役に立っています。まあ、もちろんあれだけのスタイルの人たちを集めたから成り立っていたところももたくさんあるんだけど…
四季に入ってからは「ウエスト・サイド・ストーリー」1年半位、全国を回っていました。ジェット団だったので髪の毛をド金髪にして、普段は帽子をかぶって隠してました。
それから「キャッツ」はリピーターの人が多くて、「猫に名前を付けるのに」のところでぴったり同じに喋ってるお客さんがいて、舞台の上から感心してました。
それにしても、最近とくに宝塚とか四季の頃の資料を見返すんですよね。今になって、昔の経験が本当に役に立ってきています。
私の性格でも長くやってこられたのはやっぱり、いい人達と仕事を共に出来たということですね、あと、スイッチの入り方が(役のなりきり方)が早くて素に戻るのも早いです。
やっぱり宝塚では下っ端でしたから、場面、場面でいろんな人物になる必要があったから身についたのかなと思います。
…いずれにしてもまあ、たぶん、ミュージカル以外に他の仕事は出来なかっただろうな…と思います。


:では今日はこのへんで…

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